後代に続く生薬としてのヨモギ属は、茵蔯蒿(インチンコウ)・青蒿(セイコウ)・艾葉(ガイヨウ)が一般に知られます。このうち茵蔯蒿と青蒿は『神農本草経』(注:森立之校正本)に収載されていますが、艾は若干後代の『名医別録』が初出で、医学的背景が他の2生薬と若干異なることは留意すべきでしょう。
国内においては756年作成とされる正倉院『種々薬帳』にヨモギ属を示唆する生薬名は記載されていません(森鹿三1955「正倉院薬物と種々薬帳」『正倉院薬物』鳥越泰義1995『正倉院薬物の世界』)。『出雲国風土記』(間壁葭子1999『古代出雲の医薬と鳥人』)や藤原宮出土の薬物木簡(8世紀初めまでの状況を反映。これまで生薬50種が確認されている:丸山裕美子1998『日本古代の医療制度』)にも記載がなく、収載は平安初期以降に明確化します。中国書籍の伝来状況からヨモギ属についての知識は無論あったものと思われます。また灸の記載は当初からあるので、当初内服ではほとんど実用に供されていなかった可能性を疑います。
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